今回のソドムスクールは、ぷらすちっくの扱う魔法少女、変身少女系のおもちゃ・グッズを概観する講義だった。コロナ流行の折柄、授業はドアを開け放ったまま行われたが、ドールのみならずレディースやヴィンテージのスタッフも出席し、それぞれの関心のもとで質疑・発言を投じたことは本テーマのもつ広がりと射程の深さを思わせた。かつてセーラームーン物を結集させ伝説の号となったまんだらけZENBU70号の話題も出るなど、この困難な時期、各分野の連携における攻めの可能性をも感じさせる回となった。
「魔法少女」とは「魔法だけでなく超能力なども含め、特殊な能力・技をもつヒロイン。(まんだらけ的には)少女漫画原作、女児向けアニメ」による存在を指す(大内さんのレジュメより)。
授業はぷらすちっくの商材である主に80年代以降の作品を対象に、参考文献として愛原るり子「'80s&'90s魔女っ子おもちゃブック」(2020 グラフィック社)を用いつつ作品の歴史とグッズの変遷をたどる形で進められた。魔法少女ものに造詣の深い比留間さんの、かゆいところに手が届く詳細なストーリー解説が頼もしい。
1982年「魔法のプリンセス ミンキーモモ」、83年「魔法の天使クリィミーマミ」で、第二次魔法少女ブームが到来した。ミンキーモモがプロの職業人に変身したりクリィミーマミが「ちょっと綺麗なお姉さん」(大内さん)になってアイドル活動するなど、女の子の願望が家庭や学校から飛び出して、より積極的なものとなっている。
この80年代初頭、グッズには主にプラスチック素材が使用され、パステル調の色合いでイラストやロゴの入ったものがメインだったという。当時メッキ加工は少なく、ギミックも簡素だった。時代が下るにつれてきらきらするメッキ加工が用いられ出し、グッズも多様になっていった。91年の新・ミンキーモモ(いわゆる海モモ)では、それまで暖色中心だったグッズに、ピンクと青を組み合わせる色使いを取り入れたり、他のアイテムとリンクした品を出すなど、新しい試みの品が発売された。
この時代、おもちゃ会社のスポンサーのもと一定の時間帯・放映枠で男児の変身ヒーローものに対する女児の魔法・変身少女ものを放映する流れが成立するが、スポンサーの意向は強大で、1988年「2代目ひみつのアッコちゃん」では、コンパクトが爆発的に売れたため、新バージョンでさらに売るためわざと作中でコンパクトを壊させたという。
1992年、戦隊ものをとりこんだ「美少女戦士セーラームーン」でおもちゃは圧倒的に進化した。「おジャ魔女どれみ」を経て、プリキュア一強の現在、総じて魔法少女が登場する作品自体は減ってきているという。ただアニメとは別に、実写のガールズヒロインシリーズがバンダイスポンサーで放映されるなど、アイドルグループ百花繚乱の現在を反映するような作も登場し、それぞれのグッズも注目されている。
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これは高いのか、どれが人気があるのか、これから高くなるものは何だと思うか、そういった質問がたびたびレディースの金城さんから出されました。大内さんの答えでは、人気や発売数などでベストが決まる中、今まであまり着目していなかった作品や90年代のものの価格が現在、意外なほど上がってきているそうです。
「女の子」という存在は、ジャンルを横断しテイストとニュアンスを変えて実にさまざまに加工されてきたわけですが、少女のいわゆる特殊な力を魔法といいその変容を変身という、その意味で「魔法」「変身」は、女の子を語るきわめて根源的な要素であるように思います。
男の子がけっきょく大人になっても男の子であるのと違って、女の子は永遠ではない。だからこそ何かを選び取る前の女の子は不思議な力をもつのであり、それを用いて何者かになる、誰かを救う、といった話が普遍的になるのだと感じます。多くのひとが苦しみ鬱々としているこの時期、女の子の輝きと憧れを記す年表をたどって、自分たちが手にしている文化という財産を改めて見つめるような思いがしました。今回も非常に貴重な授業を有難うございました。
アルバイト 池田